IGCSEとはイギリス式の義務教育終了時一斉テストのことで、その結果で大学を目指す大学予備課程に行けるかどうかが決まります。うちは3人の子供がみんなこれを受けた後それぞれの進路を進んだので紹介します。
10年生からの2年間の集中IGCSE
イギリスは5歳から義務教育が始まります。小学校が6年、中学に当たる7-9年生が終わるまではゆったりと幅広い科目を学びますが、11年生の終わりにあるIGCSEに向けてこの10-11年生(日本では中3-高1の年齢)では一人一人の受験科目に沿って集中的に勉強します。選択教科は学校の規模が大きいほど多くなり、小さい学校であれば施設も専門の教師も制限され、選択肢はかなり少なくなります。数学と英語は必須であとは基本的に5教科以上合格しなければ大学予備課程に進めないので、最低5教科、複数の語学ができる生徒などは10教科以上を選択することもあります。11年生になってから数か月で模擬試験があり、その結果をもって次の進学先(大学予備課程や短大、専門学校など)を受験することが多いです。
我が家の場合、上の双子は両方文系、下の子は理系で、理系の場合は物理、化学、生物、数学、上級数学、英語、英文学、を必ず取らねばならないのでかなり勉強する必要があります。
IGCSEにはケンブリッジ式やオックスフォード式などいくつかのテストボードに分かれてい実施されていますが、最も有名で数も多いのがケンブリッジ式で、それだけでも2018年には140か国、4600校で採用され、世界で10万人以上が受験しています。子供が通っていたインター校では、さらにもう一つのテストボードであるエデクセル(EDEXCEL)が主流で、さらにいくつかの科目ではケンブリッジとオックスフォード式が混じるといった感じで、非常にややこしいものでした。イギリス国内ではInternationalがつかないGCSEを受験します、要するにIGCSEとはイギリス国内で生徒が受ける義務教育終了一斉テストの国際版ということです。ですので、イギリス式と比べて国際色ということでは、IBシステムの同年代で受けるMYPの方がずっとグローバルな視野で教育を考えているということにはなります。ちなみに、次男が現在通っているイギリス系のインター校でも、IGCSEは来年から廃止され、MYPに移行することが決まりました、これは世界的な潮流で、とくにIGCSEの後に多くの生徒が大学予備課程として履修するA-Levelは、実情には合わなくなってきているなどの指摘もあり、多くのイギリス系インター校でもすでにIBDPに移行済みです。ジャカルタにある他のイギリスに準じたインター校、例えばシンガポール系のインター校などもIGCSEの後、良い大学に行くことを目指してIBDPのコースが取り入れられています。
IGCSEの内容と採点
IGCSEではどの教科でも、とてもたくさんの作文を要求されます。マークシートとは対極にあり、例えば歴史であっても出来事に対する背景の考察や意見を述べる必要があり、日本の覚えていく歴史とはかなり違います。採点は本国イギリスに送られて担当者が行うらしいですが、例えば「食物と栄養」、などではその場で料理を作るので味の採点は現場の先生が、見栄え(料理の写真)とペーパーテストについては本国で、のようになっていました。おかげで受験料が非常に高額で、双子だったので二人で25万円くらいになり、ひっくり返りそうになりました。。。採点は1-9までの9段階(またはAからE)に分かれ、3以下は不合格となります。Pre-Universityといわれる大学予備課程は、インター校の場合大抵2年間で、ほとんどのばあいはGCE A-LevelかIBDPに行くわけですが、インター校のセカンダリの続きでその過程があることもあれば、ない場合にはその予備課程を提供しているところへ入学しなおさねばなりません。入学または進学のためにはIGCSEで5教科以上の合格が必要となり、その要求水準さえ満たしていれば大抵は入学でき、入学試験のようなものはありません。また、行きたい大学や学部がすでに絞られている場合や、4教科しか合格しなかった場合、大学によってはFoundationという、学士過程(普通は3年)の前の基礎を学ぶ1年間のコースを持っているところが多いので、そちらへの入学という選択もあります。そちらで一定基準以上の成績が取れれば学士過程に進級できます。1年で終了する上に、学費もPre-Uに比べれば安い場合が多いので、そちらを選ぶ人も多いですし、そのような選択はイギリスでは一般的に行われています。インター校付属でPre-Uがある場合、ほとんどがそのままIBDPやA-Levelに進学し、それが難しい場合は、次男がいっている学校でもDiploma取得は目指さずIBのうちいくつかの科目を取得するIBコースや、IBCPという、学業だけではなく職業や技術取得により集中する課程もあり、IBプログラムの中でもこれら3つのコースから一つを選択できます。
その後の進路
上記のように、レベルの高い大学を目指す人は、Pre-U(大学予備課程)の王道、GCE A-Level(IGCSEのAdvance levelということです)、またはIBDP(国際バカロレアディプロマプログラム)を選びます。または学校がセカンダリーで終わらず12-13年生として続けることができる場合はそのまま学校の持つカリキュラム(大抵は上記のうち一つです)を選ぶ場合が多いです。しかしその場合でもほかの学校(例えば予備課程を併設する大学など)を選ぶ場合にもIGCSEで最低5教科は合格している必要があり、またIGCSEで選ばなかった教科をPre-Uで選ぶと、なじみのない教科の上級レベルを学ばねばならないことになり、かなりの勉強量を要求されるか、そもそも選択できない学校もあります。また、IGCSEは教科集中受験型の勉強をするのに対して、IBのカリキュラムでは考え方そのものを伸ばす方向なので、明快な答えがなかったり、批判的、論理的な考え方に重きを置くので、IGCSEからIBDPへ進学する人は多いものの、IBのやり方について行けず脱落してしまうケースもけっこうあると聞いたことがあります。他に、IGCSEで5教科が合格できなかった場合でも、3教科が合格できていれば1-2年制の短大に当たるDiplomaコースに進めます。技術系の専門学校も選択できます。
IBプログラムの採用が増えてきてすこし斜陽感のあるIGCSEですが、それでも歴史を持つ国際的な証書となり、イギリスと元植民地である英連邦では今でも重要な教育課程として存在しています。この結果をもってPre-U(大学予備課程)に進めるかどうかなど進路がばっちり決まってしまうので、生徒も親も必死です。現在はA-Levelは廃止して、Pre-UはIBDPというのが増えつつありますが、その前段階であるIGCSEはそのまま続けているインター校も多いのでまだしばらくは続くかもしれません。しかし、個人的にもPre-U課程では3-4教科だけを集中して学ぶA-Levelに比べれば、やはりIBDPの方がバランスもとれとれていて、負担は少し大きいものの広く深く学べるので大学での研究に結びつく様な学びができているのではないかと感じています。
うちの場合は
うちは3人ともIGCSE以外の選択肢がない学校に行ったのでMYPとの比較はできませんが、その後の進路は三者三様となりました。まず、長女はA-Levelのある大学に進学し、1年半のコースを終えて日本の英語で学士のとれる大学に入学しました。長男は勉強が苦手で、IGCSEで3教科しか合格できなかったので、カレッジのDiplomaコースに進みました、ところが驚いたことにそこで合格すれば大学に進める道もあるとのことで、今はそこから大学に進学しています。次男は今の学校が、IGCSEの後、IBDPを提供しているのでそれに進み、現在その1年生ですが、来年は親の都合で同じ学校には進級できなくなってしまったのでIB2年目ができる学校を含めいろいろ探していたのですが、結局マレーシアにあるイギリスの大学のFoundationに転学することになりました。もう行きたい方向も大学も見つけたからそこでいいとのことです。コロナで1年日本の学校に行かざるを得なかったために、予定通り卒業まで終わらせることができず申し訳ないことをしました。日本人のお子さんは優秀な人が多いので、その中で凡庸なうちの子供たちにはやきもきすることもありましたが、背伸びをしても仕方がないし、本人が希望する方向で、ゆっくり将来を考えつつ学べる大学に行ければそれで十分と思えるようになりました。
終わりに
インター校に行っていると、IGCSEの後は、絶対にIBDPやA-Levelで成功を収めてよい大学へ進む、ということがスタンダードになってしまって、他に目がいかなくなる傾向にあると思いますが、実は選択肢はたくさんあるのです。イギリスやカナダで公立校にお子さんが行ってる友人は、A-Levelなんてわざわざしんどいものはうちの子はとらないよー、といっていましたし、子育て中のスイスの友人はスイス生まれのはずのIBDPなんて聞いたこともないと言ってました。
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