IBプログラムの歴史と変遷

国際教育

IB、国際バカロレアの報告はあちこちで見つけることができますが、元の資料を読むとけっこう違っていたり誤解されたりしているように感じたので、一次資料を見てみました。

IBDPの誕生

IBDP(国際バカロレア、ディプロマプログラム)は、1968年にスイスで開発されました。なぜスイスという小さな国で開発され発展したのかは、そこに国連関係、国際機関の本部となっている団体が多くあり、それらの職員の子供がさまざまな国のインターナショナルスクールに行っても躓くことなくよい教育を受けて、大学に進み世界のリーダーになっていけるようにと大学予備課程の2年間の教育プログラムとして作られたというわけです。スイス本部で勤務する国連職員の子女らということで、まさにエリートの子供をエリートとして教育するために作られた大学入学のための資格制度です。このため、徐々に広がりを見せてきた1971年の時点でも、すべてが私立学校で公立の学校はまだ全く取り入れられていませんでした。ヨーロッパの多くの大学は3年制で、セカンダリースクール(多くは5年の中高課程)を終えて、この2年の大学予備課程を経て大学入学となります。

他の大学予備課程に比べると、6教科という全般的な高い学力に加えて、自立して研究に取り組める力や批判的な思考力、文章力、協調性、グローバルな視野、社会性など全人的な力を持つことを要求される厳しい内容です。

公教育への広がり

IBDPのディプロマ取得を目指す受験者は8.8万(2020年)となっており、近年になって注目されてきてはいるものの国によっては大学予備課程として、または高校の2-3年の過程として受け入れられつつあるという程度で、やはり大きくIBプログラムを取り入れつつあるのはインターナショナルスクールです。もともとインター校出身の子供たちをエリート教育するために考案されたプログラムなので当然ですが、グローバルなリーダーを育成する、という目的のために徐々に様々な私立校でも取り入れられるようになってきました。アメリカではIBDPというフルのDiplomaを取る形のみでなく、一部の科目をIBDPで学び一定以上の成績が取れれば大学での単位の一部として認められるという形でも広く取り入れられるようになり、イギリスでも2006年から公教育の中で取り入れられるようになりました。2020年は17万人がIBDPで提供される科目の試験を受けているものの、Diploma取得(6教科と論文作成などの全ての必要事項を満たしての受験)に挑戦した人数は8.8万人となっています。その多くはインターナショナルスクールの生徒で、Diploma取得を体系的に目指す教育を行っている学校は、やはりインター校がメインとなっており、公教育の中ではIBプログラムが取り入れられつつあるものの、大学入学のためのシステムは国それぞれに定められているので、Diploma取得のための教育はまだ多くは取り入れられていないのが現状のようです。

インタナショナルスクール協会との強い結びつき

IBDPは元々インター校の生徒のために考えられたプログラムなので、当然のことながら様々なインターナショナルスクール協会と連携しており、グローバルな教育へのニーズが高まるにつれIBDPにつながる教育として、MYP(Middle Year Programme)がセカンダリースクールのプログラムが1994年に紹介されました。これは、ISAC(International Schools Association Conference)インターナショナルスクール協議会が1980年に提案し、プログラム構築に着手しIBOが1992年にこれを引き受けた形で完成させたものです。同じくPYP、プライマリープログラムは1990年にヨーロッパインターナショナルスクール協議会が検討をはじめ、1997年にIBプログラムの一環として始まりました。

IBプログラムはインターナショナルスクールを中心として世界に広がり、公教育(公立、私立を含む)にも少しずつ広がっています。2020年にはプログラム実施校の約半分が公立校となっており、世界に大きく広がっているように見えますが、IBプログラムを採用している学校は小中高及び大学予備課程併せても世界でまだ5300校のみで国家プログラムとして取り上げている国はまだありません。その中でもIBDPを取り上げている学校数は3500校ということですが、2020年に17万人がIBDPの科目試験を受けたものの、上記のように、そのうちDiploma取得 を目指した受験者は8.8万人でした。あと半数は大学受験に有利、または大学に入学してからの単位としてみとめられるということで1教科から数教科のみを受験したということですが、フルでDiploma取得を目指したわけではなく、このカテゴリに入るのはイギリスおよびアメリカの公教育の中で取り入れられているIBプログラムを実施している学生が多いようです。フルのDiploma取得者は世界中で8.8万人とはまだまだ少ない数で、IBDP取得者への大学の期待は高いもののいまだにその多くはインターナショナルスクール出身者で占められているようです。

他国への広がり

1968年に英語と同時にフランス語のIBDPが紹介され、1983年スペイン語のプログラムが、1997年に中国語でのプログラムが公式に可能となりました。しかしながら、2020年時点でフランスでIBDP導入校は20校のみでほぼインター校となっており、公教育の中では取り入れられておらず、中国でも140校で、そのほとんどがインター校でその中に私立校が混じっている程度です。面白いのは中国で広くIBが取り入れられているのは、幼稚園でした。

まとめ

IBプログラムは最初は大学予備課程としてのDiploma取得コースが開発され、その後セカンダリースクール、プライマリースクールに当たるプログラムが紹介され、必ずしもDiploma取得のみを目的としないプログラムとして広がってきています。Diploma取得を学校として取り組んでいるのはそのほとんどがインター校で全世界で8.8万人でした。グローバルな人材育成をめざすこのIBプログラムは、国の方針や学校によっていろいろな形で少しずつ取り入れられているようです。

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